ギヤ比(減速比、変速比とも)について語るには各ギヤのギヤ比とファイナルギヤのギヤ比(終減速比)を元にグラフの一つでも作れば凡その傾向(加速重視か最高速重視か)が分かります。グラフの傾きが直角に近い、または各ギヤの離れ具合が小さければ低速型の加速重視、グラフの傾きが平行に近い、または大きく離れていれば高速型の最高速重視という感じです。しかしこれだけだと傾向が分かるだけで速度までは分かりません。
各ギヤとファイナルギヤのギヤ比にエンジン回転数とタイヤ直径の要素を加えると、その回転数における速度が分かるようになり、エンジン回転数の上限を設定すると各ギヤでの最高速度が分かるようになります。このときの最高速度は実際にその車で出せるかどうかではないことに注意が必要です。
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この毎分250回転というのはタイヤの直径に係わらず、とにかく回転するものですから速度を決めるのはタイヤの直径であり円周が鍵を握っています。FJクルーザーに装着される265/70R17のタイヤを例にすると直径は80.3cm、80.3cmの円周は円周率を3.14とすると252.1cmなのでタイヤが1回転するごとに車は252.1cmだけ進みます。毎分250回転するということは1分間あたり63025cm、単位をメートルに直すと毎分630.25m、1時間あたりでは37815m、キロメートルに直すと37.815kmとなって時速37.815kmというわけです。
もっと小さなタイヤ、例えば同じギヤ比と回転数で145/80R12のタイヤ(直径53.7cm)を装着しているならタイヤ1回転で168.6cmだけ進み、毎分250回すると1分間あたり42150cm、メートルに直すと毎分421.5m、1時間あたりでは25290mとなって時速25.29kmになる、と。
また、表にあるように1速ギヤとファイナルギヤのギヤ比が1を超えている場合は減速されますが、逆に1より小さい場合は増速されます。例えばエンジン回転数を毎分3000回転、ファイナルギヤも4.000のままでギヤ比だけを3.000(1:1/3)から0.500(1:2/1)にすると、入力側の3000回転は出力側で6000回転に増速、ファイナルギヤで1/4に減速されてタイヤは毎分1500回転するようになります。
イラストを元に説明できればまどろっこしい説明など不要で理解も抜群に深まることでしょうが、残念なことに絵心というものがまるでないのでどうにもなりません。ちょこざいなテーブルを作るだけで精一杯です。
さて、巷に良くある一般的なギヤ比についてはこのくらいにして本題に入ります。FJクルーザーやジムニー、パジェロミニ、エスクードといった本格的なSUV、クロスカントリー車には通常の変速機(変速ギヤとファイナルギヤ)の他に副変速機というものが付いており、HiレンジとLoレンジを切り替えることでギヤ比を任意に高くしたり低くしたりできるようになっています。